★ ストレスって何?Ⅳ(2025,9,21)
● 認知を変える
ストレスは悪者とは限りません。
ストレスを感じるようなことがおこったときにそのことを忘れてしまうのではなく海馬がそのことを記憶することで、また、同じような困った出来事が起こったときの対処方法が経験値として積み重なっていくのです。自分の生き方スキルを向上させるためにストレスは必要なのです。
聖書には次のように書かれています。「わが子よ、主の鍛錬を軽んじてはならない。主から懲らしめられても力を落としてはいけない。なぜなら主は愛するものを鍛え、子として受け入れる者を皆、鞭打たれるからである。(中略)おおよそ鍛錬というものは、当座は喜ばしいものではなく、悲しいものと思われるのですが、後になるとそれで鍛え上げられた人々に、義という平和に満ちた実を結ばせるのです」(ヘブライ人への手紙12.4~11)
工学博士の田坂広志さんは著書で次のようなエピソードを紹介しています。「ある人が、海外出張中に自動車を運転していて、一瞬のミスから大事故を起こし、病院に担ぎ込まれた。しかし、大手術の結果、一命はとりとめたものの、左足を切断するという結果になってしまったのである。麻酔から覚め、その現実を知ったこの人は、一瞬の不注意によって人生を棒に振ってしまったことを思い、悲嘆のどん底に投げ込まれていた。しかし、事故の知らせを受けて日本から駆け付けたこの人の奥さんは、病室に入るなり、旦那さんを抱きしめて、何と言ったか。「あなた、良かったわね!命は助かった!右足は残ったじゃない!」田坂さんはこれを「解釈力」と呼んでいます。その出来事をどう解釈するかによってその出来事が起こった意味がまるでちがってくる。運がわるかったのか。それとも何者かが自分に何かを気づかせよう、成長させようとしているのか。アウシュビッツ強制収容所から生還した精神科医V,フランクルはそのようなとらえ方を「態度価値」と呼んでいます。

いまを生き切る覚悟が、自分の内に眠る無限の可能性を開花させる——田坂広志|人間力・仕事力を高めるWEB chichi|致知出版社

● 執着しない 手放す(全託)
執着しない、手放すということも時には必要です。別の言い方をすれば「程よく諦める」「受け止める」そして「受け入れる」ということです。
仏陀は四苦八苦を人生において避けることのできない苦しみだと説いています。
・生・・・生まれる苦しみ
・老・・・老いる苦しみ
・病・・・病気の苦しみ
・死・・・死ぬことの恐怖、苦しみ
・愛別離苦・・・愛するものと別れなければならない苦しみ
・怨憎会苦・・・嫌な人と一緒にいなければならない苦しみ
・求不得苦・・・欲しいものが手に入らない苦しみ
・五陰盛苦・・・自分が身体を持っていることによる苦しみ(情欲や見かけ、感覚過敏、とらえ方の偏りなど)
そして諸行無常・・・すべては変化していて永遠に変わらないものなどないという現実
これらを受け入れるということ。
イエスも言っています。「明日のことまで思い悩むな。明日のことは明日自らが思い悩む」(マタイによる福音書6,34)
「程よい諦め」の次に来るのが「手放す(全託)」ということです。無責任に「やーめた」と投げ出すことではなく、大いなる者にすべてを託するということです。そして心を使い続けるということです。「天は自ら助ける者を助ける」というではありませんか。前述の田坂さんは「導き給え」と祈られるそうです。天は「よっしゃ、任せとけ」と動いてくださるはずです。
今、SNSバズっている藤井 風さんの歌にこんな歌詞があります。
「明けてゆく空も 暮れてゆく空も
僕らは超えてゆく
変わりゆくものは仕方がないねと
手を放す、軽くなる、満ちてゆく」
(満ちてゆく)

藤井風が老人と青年の2役に、映画「四月になれば彼女は」主題歌MV公開(動画あり) – 音楽ナタリー
私が良く使っている「マントラ(自分に言い聞かせる言葉)」をあげてみますのでよかったらつかってみてください。
「まっいーか」 「こんなもんだろ」 「期待するから腹が立つ」 「短気は損気」「急がば回れ」 「待てば海路の日よりあり」
「復讐するは我にあり(復讐は神様にお任せ) 」 「心配なことは起こらない」 「すべては良くなる」
「みんな苦しみや悲しみを抱えている」 「これって面白いかも(一見いやなことだけど)」・・・
みなさん、この世知辛い世の中、何事にも感謝する気持ちを大切に生きていきませんか。
よかったら愚痴でも聴きますよ(^_-)-☆
(参考:田坂広志『運気を開く~心を浄化する三つの技法~』光文社、2019. )
(参考:V.E.フランクル著 山田邦夫監訳『意味による癒し』春秋社、2004.)
★ ストレスって何?Ⅲ(2025,9,20)
● ストレスとうまく付き合うために
ストレスのもとになること、ものから遠ざかることがいちばんですが、そうもいかないことがほとんどではないでしょうか。
なのでストレスと元うまく付き合っていく方法が求められてきます。
アメリカ心理学会では次の5つを推奨しています。
① ストレスの原因を避ける・・・これは難しいことが多い
② 笑い・・・いつも微笑んでいる人、良く笑う人、ユーモアのある人って素晴らしい!
③ 友人や家族のサポート・・・愚痴でもいいからとにかく話を聞いてくれる人が周りにいることはすごく恵まれていること
ただし悪意のある悪口は避けましょう。悪い波動が自分に返ってきますよ。
④ 運動・・・できるところからはじめてみましょう。楽しく行えることがポイントです。
⑤ 瞑想・・・ボブさんは毎朝行っています。
ここでは特に④の運動を取り上げてみましょう。
ネズミを使った実験でこんな結果が出ました。11週間運動したネズミと運動していないネズミを比べると、運動したネズミは延髄の神経細胞の突起が半減していました。延髄の突起(受容体)が多いと偏桃体(感情の発信源)からの受け取る情報が多くなりそれが自律神経に過剰に伝わり自律神経を興奮させてしまいます。しかし突起が少なくなると自律神経に伝わる情報が少なくなり自律神経の興奮を抑えられます。また、延髄には血圧を制御する中枢があり、血圧を正常にコントロールすることができるようになります。

「延髄」の写真素材 | 95,306件の無料イラスト画像 | Adobe Stock
でも、運動は定期的に継続して行うことが効果的で運動をやめてしまうとまた元に戻ってしまいます。そこでボブさんがお薦めするのがダンスです。ボブさんが開発した「ダンスビック(ヒップホップダンスとエアロビックエクササイズを合わせたもの」ヒップホップの簡単なステップを繰り返しますので誰でもできます。上半身だけでもできます。おまけにリズミカルなリズム運動はセロトニン(脳のコンダクターといわれるように脳内の交通整理をしてくれる神経伝達物質です)の分泌を促すという効果もあります。

* インスタグラムにボブさんダンス教室の様子をたくさんアップしていますのでごらんになってみてください
」
★ ストレスって何?Ⅱ(2025,9,20)
● 身体で何がおこっているのか?
ストレスホルモン(コルチゾール)の影響で血小板が固まり血栓(血の塊)ができそれが脳梗塞や心筋梗塞を引き起こします。また、心拍が乱れて不正脈を誘発しこれまた狭心症や脳梗塞、心筋梗塞といった命に係わる重大な事態を引き起こします。
ボブさんも学科の再編の際、学科長で、ものすごいストレスに晒されました。もし2~3週間で代わりの教員がそろわなかったら申請を取り消してくださいと文科省の方から追い込まれていました。動悸息切れがひどくなり、ある日原因不明の下痢で救急車で病院に運ばれたのをきっかけに心臓の専門医にみてもらうことになりましたが(若松市内にその道の名医がいらっしゃったのです)、検査の結果、突然死する可能性のある不整脈が複数でているということですぐにでも手術ということになりました。それで命拾いしました(若松インターベンションクリニックの阿部先生ですけど、ボブさんにとっては命の恩人です)。
ストレスとガンの関係も見のがせません。ガン細胞を攻撃する免疫作用のある「ATF3遺伝子」という免疫細胞があるのですが、ストレスホルモンが刺激するとガンを攻撃することをやめてしまうのです。さらに怖いことにがん細胞の転移を手伝ってしまうのです。こわ!
さらに慢性的ストレスは脳を攻撃します。なのでうつや気分障害、不安障害を引き起こします。自律神経が不調になり(偏桃体から緊急指令を受けた自律神経は全身の血管をぎゅー、と締め上げます。これが高血圧です。)食欲がなくなったり不眠になったりパニックを起こしたり…ほんとにつらいですよね。周りの家族にとってもつらいことです。ほかにもじんましん、胃炎、胃潰瘍、糖尿病なども引き起こします。

病は気(自律神経のアンバランス)から|生駒市の内科・循環器内科 カズクリニック | 近鉄奈良線「東生駒」駅より徒歩1分
怖いですよね・・・では私たちはどうこのストレスにつきあっていけばよいのでしょうか?・・・つづく
(参考:NHKスペシャル取材班『キラーストレス~心と体をどう守るか~』NHK出版)新書、2016.)
★ ストレスって何?Ⅰ(2025,9,19)
ときどき相談者さんと話していますとそのほとんどが職場などの人間関係でストレスに悩まされていらっしゃるようです。
私も退官してからなにか一気に今まで隠れていた体の問題が噴き出てきた感じで毎週いくつもの科(消化器内科、循環器科、血液内科、脳神経内科、歯科、口腔外科)に通院していました。近くに総合病院があってほんとに助かりました。でもこれって良くなる前、好転反応かなと受け止めています。その証拠に会津にいるときは一向に改善しなかった糖尿病が基準値に戻りました!
心臓専門の先生によく言われていました。「市川さん、ストレスがなくなったらよくなりますよ」・・・でもそれって仕事をしている以上無理・・・。なんとかストレスとうまく付き合っていく方法を身に着けていくことがポイントですよね。
そんなわけで今回ストレスについて考えたいと思います。
●脳内で何がおこっているのか?
ストレスには「頑張るストレス」と「我慢するストレス」とがあります。このなかで「我慢するストレス」が厄介なしろものになります。ストレスを感じると副腎から「コルチゾール」というホルモンが分泌されます。コルチゾールは血流にのって全身をめぐりエネルギー源等必要なものを補充し脳に帰ってきてその役割は終わります。しかし、「我慢するストレス」状態が長く続きますとコルチゾールが垂れ流しになり脳内に溢れて脳をむしばみ始めるのです。つまり「キラーストレス」化してしまうのです。ネズミを使った実験ではストレス状態が慢性化すると大脳辺縁系にある「海馬」がダメージを受け萎縮してしまうのです。その結果「うつ」の症状が現れてきます。虐待をの受けてきた子どもの海馬が委縮している傾向にあることもわかってきています。
また、ある研究によると子ども時代に「いじめ」を受けた子どもが大人になってからもずっと影響を与えるという。脳の「偏桃体」大きくなる傾向があるということがわかったのです。偏桃体が大きくなるということはそれだけストレスに対して過敏になってしまうということです。ほかにも前頭前野に影響を与え容積が減少して今うことがわかっています。

ストレスになることが職場であっても「はいもうお終い」と家に帰ったら気分を切り替えられるかというと・・・そうはいきませんよね。家に帰っても嫌な上司の顔を思い出してイライラ、うつうつしちゃいますのね。これは「マインド・ワンダリング(心の迷走)」と呼ばれる現象です。それを加速させているのがIT環境やSNS。病院に行くと受付から支払いまでほとんどがIT化されています。ほとんどの高齢者さんがまごまごしていてあきらめてしまう方もすくなくありません。電話をかければ音声メッセージが流れて「はやくしゃべらせろ!」といらいら・・・。SNSでは未読スルー、既読スルーで「何か悪いこと言った?」「あたしってそれだけの存在なのね」位置情報アプリが機能していないと「わかっちゃまずいところにでもいるのでは」などなど気の休まるときはありません。これらが続くことでストレスに弱い脳でできあがっていくのです。

さてさて、ほかにどんな影響があるのでしょうか?・・・つづく
(参考:NHKスペシャル取材班『キラーストレス~心と体をどう守るか~』NHK出版)新書、2016.)